とあるラジオ番組を持たせてもらってからの俺は少し有頂天すぎた。
はがき職人という魔の刺客があることも知らず…。
はがき職人は全部で7人いる。7人の侍というところか…
毎回新コーナーが出来る度に笑いを誘うような回答を送ってくれるのは
いいが、だんだんそれが悪意に満ちてきた。
あきらかに先輩のネタや俺らのコントをぱくったような答えを送ってき
ては「どうだ、面白いだろう」と鬼の首をとったようにわざわざ電話を
かけてくる。リクエスト曲をかける時間があるのだが、そのあいだにも
リクエスト曲に関してのクレームなどをファックスで送りつけてくる。
初めのうちは変なやつがいるものだと笑っていたが、最近はなんだか脅
迫めいていてスタッフも俺たちコンビも多少ビビッていた。
やつらは職人ではなくはがき悪魔だ、と。
なんとかやつらの暴走を止める手だてはないか、と構成作家や、ディレ
クターと考えたが、番組はいったん休止することになった。
はじめての冠番組が急に終わりを告げた日の夜。
タクシーの車内で俺と相方はずっと黙ったままだった。
番組では、あんなにしゃべって、はしゃいでたのに。
仕事とかそんなん関係なく、ほんとに楽しかった。
よくのみにつれってってくれたディレクター、馬鹿やったADのみんな、
ちょっといい感じになったタイムキーパーさん。
「いい時間だったよな」と。
安らかな顔をして眠っていた相方がすごく楽しそうに寝言をいった。
「こないだ久しぶりにマイケルジャクソンが大八車をひいてるのを見て
さー」
マイケルジャクソンってそんなしょっちゅう大八車ひいてたっけ?